第一回定例会に日本共産党区議団が提案した意見書 4件

子どもの貧困対策の抜本的な強化を求める意見書(案)

 親の失業や低収入、病気、離婚、死別など家庭の経済状況の悪化でもたらされる子どもの貧困は、日本では年々深刻になっています。国の貧困の実態を示す国際的な指標である「相対的貧困率」で「子どもの貧困率」は2006年には14・2%、約7人に1人でしたが、2012年では、16・3%、約6人に1人へ拡大しています。国民全体の貧困率そのものが悪化しており、貧困解決は社会全体の課題であることは当然ですが、貧困を次世代に連鎖させないという点で、子どもの貧困打開は待ったなしの課題として政治に迫られていることは明らかです。
 貧困問題解決に取り組む市民らの運動を背景に、2013年に成立した「子どもの貧困対策法」は、事態打開の第一歩となる法律です。貧困の基本概念の定義をしていないなど不十分さはありますが、「貧困の状況にある子どもが健やかに育成される」環境整備や「教育の機会均等を図る」ことを目的に掲げ、子どもの貧困対策の総合的な策定、実施にたいする国・地方自治体の責務などを明記しています。
 法律で政府に作成を義務付けられた「対策大綱」は、貧困率削減の「数値目標」の設定や、世界の多くの国が採用している返済不要の「給付制奨学金」導入、ひとり親世帯支援など、実効性ある「子どもの貧困対策」のためにも、見直し、再検討が必要です。
 よって、中央区議会は、政府に対し、子どもの貧困対策の抜本的な強化を強く要望します。
 右、地方自治法第九十九条の規定により、中央区議会の総意をもって意見書を提出します。
   
 平成二十八年  月  日
                          東京都中央区議会議長  鈴 木 久 雄 
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
厚生労働大臣 あて

  

ブラックバイト根絶のための的確な対策を求める意見書(案)

 正規雇用が前提とされてきた、これまでの労働形態が激変し、非正規雇用が拡大してきています。最近では、これまで正社員が担ってきた責任の重い業務をも非正規雇用の労働者が担っていることは珍しくありません。
 この状況の変化によって、パートやアルバイトといった働き方にまで、労働法制に違反した、いわゆる「ブラック」な働き方が広がって来ています。
 よって、中央区議会は、適正な労働環境を守り、貧困を予防するため、ひいては憲法の保障する健康で文化的な生活を保障するために、以下の点を強く要望します。

一.昨年四月一日施行されたパートタイム労働法をもとに、労働法制違反に対する調査、監督、指導を強化すること。
二.違法な労働環境か否かの、労働者側からの判断基準となる労働者の権利の周知徹底を行うこと。
三.違法な労働環境に置かれた際の、相談窓口や対応方法の周知徹底を広範に行うこと。

 右、地方自治法第九十九条の規定により、中央区議会の総意をもって意見書を提出します。

 平成二十八年  月    日
                          東京都中央区議会議長  鈴 木 久 雄 

内閣総理大臣、厚生労働大臣あて

国民健康保険制度における国庫負担の増額を求める意見書(案)

 消費税の増税と合わせて年金の引き下げをはじめとする社会保障の削減により、特に国民健康保険に加入する中小業者やその家族、従業員、年金生活者などの暮らしはますます厳しくなっており、国民健康保険料の負担が重くのしかかっています。中央区でも22・96%の世帯が何らかの滞納を抱えています。国民健康保険加入者の8割近くが年間所得200万円以下の世帯であり、低所得世帯にとって払いたくても払えない保険料となっています。
 この大きな原因は、国保財源の国庫補助を医療費ベースで45%から32%へと削減したことです。中央区では、国民健康保険会計の歳入に占める国庫支出金の割合は、一九八四年の44・21%から二〇一六年には21・70%へと大幅に激減しています。
 全日本民主医療機関連合会の調査によると、二〇一四年の1年間に経済的理由による受診の遅れで、56人もの方が死亡しています。このうち保険証のない無保険者や、「資格証明書」・「短期保険証」をもつ人は59%を占めています。これは氷山の一角であり、実際はこの何十倍もの人たちが命を落としていると想定され、このまま放置しておくことはできません。
 そもそも国民健康保険法は第1条で「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」とし、第4条で国民健康保険事業の運営の健全化を国と都道府県の責務としており、国民健康保険は単なる国民同士の助け合い事業ではありません。
 社会保障として実施されている国民健康保険事業であるにもかかわらず、高い保険料のために暮らしが圧迫され、これが払えないために医療を受ける権利すら侵害されている事態は、本来の国民健康保険事業の目的にも逆行するものです。国民皆保険制度のもと、全ての国民が安心して必要な医療が受けられるようにするためにも、社会保障制度としての国民健康保険制度を堅持することが求められています。
 よって、中央区議会は、政府に対し、国民健康保険制度の安定した運営ができるよう、国庫負担を増額することを強く求めます。
 
 右、地方自治法第九十九条の規定により、中央区議会の総意をもって意見書を提出します。

 平成二十八年  月    日
                          東京都中央区議会議長  鈴 木 久 雄 

内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、財務大臣 あて

ヘイトスピーチを根絶するための対策を求める意見書(案)

 近時、排外主義や人種差別を標榜する団体によるデモ・街宣活動が活発化しています。そこでは、人の生命・身体に対する加害行為を扇動し、特定の民族集団に対する憎悪をあおりたてるプラカードの掲示や言動が繰り返されています。
 中央区銀座では、多くの訪日外国人がショッピングや飲食、銀ブラを楽しんでいる歩行者天国となる日曜日を中心に、二〇一二年8回、二〇一三年11回、二〇一四年10回、二〇一五年14回とほぼ、毎月のようにヘイトスピーチ・ヘイトデモが行われており、銀座商店会の方たちも「非常に迷惑」と困惑している状況です。
 ヘイトスピーチは、人間の尊厳と平等を否定し、人種的憎悪と差別を生み出し、拡大し、ひいてはジェノサイドにもつながっていく危険性をはらんでいることから、日本も加盟している人種差別撤廃条約で、人種差別の一形態として、禁止・根絶されるべき対象であることが明確に定められています。
 二〇一四年八月二十九日の国連人種差別撤廃委員会は、日本における排外主義的デモとヘイトスピーチの蔓延に対して懸念を表明し、日本政府に対して必要な措置を講じるように勧告しました。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを控え、その選手村が、銀座にほど近い晴海に建設されるなか、ヘイトスピーチを放置することは、国際社会における日本への信頼を損ねることにもなりかねません。
 よって、中央区議会は、政府に対し、「表現の自由」「集会の自由」には最大限の配慮をしながらも、ヘイトスピーチを根絶するための法整備を行うなどの対策を強く求めるものです。

 右、地方自治法第九十九条の規定により、中央区議会の総意をもって意見書を提出します。
 
 平成二十八年  月  日
                          東京都中央区議会議長  鈴 木 久 雄 
衆議院議長、参議院議長、
内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣 あて

ページトップへ▲